【犬みたいな人】

一周年記念リクエスト大会
エチゴヤイヅミさまリク「意外な出会い方をするカカイル」


「イルカ、俺好きな人ができたんだ」
俺の友人は、そうのたまった。
「へぇ、誰だ?俺の知ってる子か?」
「はたけカカシ上忍。あの『写輪眼のカカシ』だよ」
「え」
驚きのあまり相手を見たが、真剣な眼差しだった。
冗談であればいい、と思っていたが、その願いは脆くも崩れ去った。
『写輪眼のカカシ』って。
だってあの人は男だろ?エリート上忍だろ?
噂でしか聞いたことのない雲の上の人。
耳に届く噂は、ハッキリ言ってお世辞にもいいとは言い難かった。
任務に関しては桁外れに優れていて、その話と言えばもはや伝説的な域だった。
だが、私的な話になると、『人を人とも思わない』だの『他人は下僕の犬扱い』だの『冷酷無比』だの『笑わない男』だの。
振られた女性は数知れず。恨んでいる人も数知れず。
噂を聞くたびに、力がある人は傲慢になってしまうものなんだ、と思っていた。
そんな『写輪眼のカカシ』を?
そう言いたかったが、昔からの友人が意を決して告白してくれたことに思えば、口にするのは憚られた。
「この前の長期任務に派遣された暗部の部隊にいて、初めて会ったんだ。すごく強い人なんだけど、それが好きになった理由じゃないんだ」
目元をうっすらと染めながら語りはじめる話をじっと聞いていた。
誤解されやすい人だとか。
任務中は滅多に笑わないけど、ふっと見せる笑顔がいいとか。
「なんていうか、あの人が自分だけに笑いかけてくれたら…幸せだろうなぁ」
そんな夢見るように言われたら、否定することもできない。
人を好きになるって理屈じゃないと思った。
「うん。そうだな。頑張れよ」
「ありがとう、イルカ。話聞いてくれて、嬉しかった」
「そんなの、いつでも…!」
「うん。ホントありがとうな」
嬉しそうに笑う顔を見ると、本当に上手くいくといいと思った。
なんだか恋をするのもいいものかな、と少し思ってしまった。
その日は、そんな暖かい気持ちになったのだった。


そんなことがあったのも忘れた頃。
「あいつ、振られたんだよ」
同僚が、イルカにだけ言うんだからな、と念を押して話しはじめた。
「えっ」
「偶然見ちゃったんだけど、あれはないよなー」
「見たって!」
告白している場面に遭遇し、ヘタに動けばお互い気まずい思いをするのは確実で、仕方なく聞いてしまったのだという。
「断る理由がさ、『俺、コリーより柴犬の方が好きなんだよねー』だったんだぞ!あの人、本当に人のこと犬扱いするんだな」
聞いた瞬間、怒りで目の前が真っ赤に染まるかと思った。
そんな理由ってあるか!
こっちは真剣に告白しているのに、ふざけるにも程がある。
会って一言いってやらなければ気が済まない。俺の大事な友達なんだから。
頭に血が上った俺は、すごい勢いではたけ上忍の家を調べ、その足で向かったのだった。


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