【35:迎えに行くよ】


【68:もう1軒行く?】からのつづき

任務でしくじった。
いや、任務自体は成功したと言えるだろう。ただその後動けなくなっただけで。
チャクラ切れだ。
助けを呼ぼうにも身体が動かなければどうしようもない。
返り血が乾いてぱりぱりになった忍服にげんなりしつつも、俺にできることは何もなかった。
帰還が遅くなればきっと里も捜索してくれるはず。
とはいえ、だらりと腕も足も投げ出したまま樹にもたれ掛かった姿勢でじっとしていると、なんだか捨てられた気分になってくる。このまま死んでしまい、そのうち腐り果てて土に還るのではなかろうか。
動けない時の思考は暗く沈んでいくばかり。それでもじっと息を潜めて待つしかなかった。
せめて楽しいことを考えよう。
里に帰ったらイルカ先生に会いに行くんだ。
きっといつものように笑って『お疲れさま』って言ってくれるはず。
そうしたら飲みに誘おう。食べに行くだけだっていい。それが頑張った俺へのささやかなご褒美なんだ。
そんなことを考えている間に太陽が沈んでは昇り、また沈む。
どれくらい経った頃だろうか、肩にごつんとぶつかってきたのは小さな鳥。
あの人を思わせるような青い羽根の。
「お前……どうしたの」
夜なのに。
真っ暗で飛べるわけがないのに。
そんな無茶をさせてまで探してくれるほどお前のご主人様が必死になってくれたの? そう思っていいの?
たとえそれが里から命じられた任務であっても、俺を捜してくれるという想像は心を浮き立たせる。
ルリコは俺の肩に留まり、さえずり始めた。
今まで五月蠅いとしか思えなかったその声も、なぜか心地よかった。
ぼんやりと歌声を聴きながら空を眺めていると、目の前が陰る。
「見つけた、カカシ先生」
「イルカ先生……」
装備を背負ったイルカ先生が立っていた。
座りこんでいる俺は首が痛いくらい見上げなきゃいけない。
会いたいと願っていたのに、実際その姿を目にするとどうしようもなく動揺し、何を言えばいいかもわからなかった。
「よかった。生きてる」
それから無言のまま、でも真剣に俺の腕や足に触れて怪我がないかどうか確認している。
その間に青い小鳥は、嬉しそうに俺の肩からイルカ先生の肩へと乗り移った。
「大きな怪我はないみたいですね」
ようやくイルカ先生がほっと力を抜くのがわかった。
「見つけてもらってありがとうございました。助かりました。捜すのは大変だったんじゃないですか? 五代目に頼まれたんでしょう?」
礼を言うついでに任務だったのだろうと問えば、イルカ先生は首を横に振る。
「ルリコがどうしても捜しに行くって……」
「ルリコが?」


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