それからは、土を取りに出かけたり藁を圧縮したりと、忙しい毎日でした。
「カカシさん、今日はもうおしまいにしましょう。いつも手伝ってもらってすみません」
「いーえ。俺も楽しいですから」
そんなことを話しながら、いつもの樹の下でイルカがちょこりと根元に腰掛けました。
「カカシさん、毎日手伝ってもらってありがとうございます。それで考えたんですけど……」
「なんでしょう?」
「一緒に作った家だから、一緒に住みませんか?」
イルカの提案に、カカシは驚きました。今まで手伝ってきましたが、まさか一緒に住もうと誘われるとは思っていなかったからです。どうせ命の恩人と思っていたので、最後まで付き合ってあげようと考えていました。もちろん一緒にいるうちに好きになっていたのは、相手には内緒です。
「俺は素性の知れない狼でしょうに、いいんですか?」
もちろん普通の子豚は、たとえどんな身分であろうと狼だというだけで誘ったりしないでしょうが。
カカシの質問に、イルカは勢い込んで答えます。
「だって、一緒に作ったのに俺だけ住むのはおかしいです!それに……カカシさんと一緒に住んで毎日を過ごせたらなって思うんです」
カカシはそれを聞いて喜びました。自分もそう思っていたからです。
「俺もです。きっとこの家に住めたら毎日が楽しいと思いますよ」
カカシが笑ってそう言うと、イルカは肯定するために勢いよく頷き続けました。
「それじゃあ、この家が出来上がったら一緒に住みましょう。約束ですよ」
「本当ですか!嬉しい。俺、明日からもっと作業を頑張りますね」
とても嬉しそうに笑うイルカを前に、カカシも幸せそうに笑うのでした。
二匹は汗水垂らしながらも、それでも作業を楽しんで毎日働いていました。そんなある日、イルカの元に一通の手紙が届きました。
『イルカ兄ちゃんへ
家が完成したから遊びに来てくれってばよ
ナルト』
イルカも遊びに行きたいのは山々ですが、家を建てるためにはまだまだやるべき事がたくさんあります。自分一人ならばともかく、カカシと一緒に住むと約束した今では、早く完成させたいという気持ちでいっぱいでした。ナルトには悪いけれど、遊びに行くのはしばらく無理だと返事を書こうと思っていました。
しかし、カカシが言いました。
「ナルトって、イルカさんがいつも言ってる弟でしょ?遊びに行ってくればいいじゃないですか」
「でも……」
「最近ずっと働きづめだったから、一日くらい休んで行ってきたらどうです?」
とカカシが勧めてくれたので、イルカは申し訳ないと思いながらも行くことにしました。
「カカシさんも一日お休みしてくださいね。一人で働いたら駄目ですよ」
カカシだけ働かせて自分は遊んでいるなんて、イルカには耐えられないので、強く念を押します。
「はいはい。わかりました」
「じゃあ、いってきます」
「いってらっしゃい」
イルカを送り出したカカシは、さてこれからどうしようかと考えました。家を建てる作業を一人で進めてしまったら、帰ってきたイルカが怒るだろう事はわかっています。なので、イルカがいたらできないことをしようと考えを巡らせました。
そして、久しぶりにとうもろこしではないものが食べたいと思いつきました。狼の習性としては仕方のないことで、さっそく狩りに出かけることにしました。
ちょうど目についたうさぎを追いかけ、たいして苦労もなく食事にありついたわけですが、食べている最中にカカシは思いました。なんだか味気ない、と。こんなことならイルカと一緒に食べるじゃがいもの方がいい気がしてきました。
いったんそう思うと、もう何をしても面白くありません。つまらなくなってごろりと横になっていたカカシは、青い空を眺めているうちにふとあることを思いつきました。
イルカを迎えに行こう。そうすれば、このつまらない時間もきっと楽しくなるに違いない。
そう考えると居ても立ってもいられなくなり、イルカが出かけていった方角へと駆け出しました。
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