「つまり。気取らない本当の自分を理解してくれるのは相手だってことを伝えるんです」
喜んでいる空気が伝わってくるイルカ先生には悪いが、それのどこがいいのかさっぱりわからない。相手を褒め称えてこそ告白というものじゃないのか。
「それで心動かされるものですか?」
恋愛事情に疎い俺は、おそるおそる聞いてみる。
「そりゃそうですよ!」
力強く頷かれ、納得はいかなかったものの自信にはなった。告白される本人が良いと言っているんだから間違いない!
思わぬところから希望が戻ってきた。
やはり教師意識が強いのか頼られるのに弱いらしい。お得情報ゲットだよ俺。
そして告白が思いのほか好感触だったこともあり、浮かれた気分は頂点に達した。
OKが貰えたんだ! なんてラッキーな。
駄目出しをされ続けた俺は、反動で浮かれすぎて調子に乗っていたのだと思う。
「あの……キスしてもいいですか?」
まさか了承されるとは思っていなかったのも事実だ。これは本当。
だから。
「それはいいですね。実践してみたらどうですか」
そう答えが返ってきて一番驚いたのは俺だった。
えええ、いいのか!
戦いて後ずさりしそうになったが、なんとか持ちこたえた。
いや、まさかまさか。
聞き間違いだろうと何度も聞き返した。が、返ってくるのは笑顔と肯定ばかりで、思わずそれに乗ってしまった。
もう心臓はバクバクで、眩暈で倒れそうになりながらキスをする。
うーわー。
天にも昇る気持ちだったが、イルカ先生の様子がおかしいことに気づいた。
まるで予想もしていなかったかのような反応。
あれ、失敗した?
「いきなりキスは駄目でしょう!」
「駄目ですか。ですよねぇ」
だと思った。
きっと何か勘違いしていたのだろう。たぶんイルカ先生の性格からして魚の鱚と間違えたとか。
あ、なんかありそう。
いや、それともこの場でいきなりは駄目だったってことなのかも!
でも役得だった。唇柔らかかったなぁ。
しかも告白の手応えもあったと思う。
「それじゃあ、合格ですか?」
「もちろん。合格です」
その微笑みが輝いて見えた。
やった!
これからめくるめく幸せの日々が、薔薇色の人生が待っている。
そう思った出鼻をくじかれた。
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