ああ、またしても失敗してしまった。
ぼりぼりと頭を掻く。
これだからおっさんくさいとか、親子だとか言われてしまうのだ。
でも、まあ、笑ってるならいいか。
楽しそうに笑うイルカを見て、カカシはため息を飲み込んだ。
料理か。
きっと魚の骨を取っているときのように、手際よく料理ができていくんだろうな。
いいなぁ。魔法の手が作る料理。
食べてみたいなぁ。
あいつらイルカ先生の手料理が食べられるんだ。ちぇっ、いいなぁ。
カカシが子供達を羨ましく思ったときだった。
笑いが止まらないでいたイルカが、急に名案を思いついたといわんばかりに声をあげた。
「そうだ!カカシ先生も是非一緒に。きっと子供達も喜びます」
「えっ。ほ、ホントですか。いいんですか?」
「もちろんです」
快諾の返事をもらったカカシは、感激にうち震えるほどだった。
誘ってもらえるとは思っていなかったから。
今まで子供と一緒に食事するのはカカシの密かな楽しみでもあった。
小さい口を思いきり開けて懸命に食べる姿は、生命力を感じさせる。
そして、ぼろぼろと零すのを叱りながら食べるのは、何故か好きだった。
でも今は、そんな子供達を少々邪魔だと思う気持ちがあった。
はっ、とカカシは我に返り、邪魔ってなんだそれは!
と眩暈を起こしそうなくらいブンブンと首を振って、その考えを否定しようとした。
「…カカシ先生?」
心配そうに声をかけられて、胸が矢で射抜かれたような衝撃。
「だ、大丈夫です。あ、あの。ぜひっ。喜んで伺います!!」
とりあえず返事だけはなんとか返す。
そして、改めて混乱と興奮でごちゃごちゃとした頭を落ち着かせようと自分に言い聞かせた。
が、それは全然効果がなかった。
ひぇえ。
どうしよう。
俺、この人を好きになっちゃったんだ!
男で上忍なんだぞ、おい。
うわぁ、どうしよう。どうしたらいいんだ。
顔が真っ赤になったり、真っ青になったりアワアワするカカシに、イルカは本当に大丈夫なんだろうかという視線を向けていたのだった。


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2002.06.29


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