それからはよく飲みに行ったり、外食はもちろんのこと、自宅で夕飯ということも多かった。
親しくなって今まで知らなかったイルカの一面を見る機会が増えたが、それを知ってもカカシのイルカを好きだという気持ちが消えてしまうことはなかった。
けれど、親しい今の関係が崩れてしまうかもしれないと思うと、なかなか告白することもできない状態だった。
そんなある日のこと。
ナルトが今の任務じゃつまらないと受付所で駄々をこねだして、カカシは思わず怒鳴ろうと立ち上がりかけたとき、三代目がこう言った。
「分かった。お前がそこまで言うなら、Cランクの任務をやってもらう」
任務依頼書によれば、ナルトたちは波の国へ行くという。
任務へ旅立つための荷物を家まで取りに帰るため、子供たちは一時解散となった。
カカシは任務の詳細を記した書類を渡すために、廊下を歩いているイルカに声をかけた。
「イルカ先生!これ、書類です」
「あ、ありがとうございます」
ちょうどカカシは受付所が交代の休み時間になったため、玄関まで送っていきますと言うと、わざわざいいのにとイルカは申し訳なさそうながらも断らなかった。
「これから波の国ですね」
「はい。緊張します」
「緊張?Cランクでしょう?」
「子供たちを連れて里の外に出るのは初めてなので…」
ああ、そうか。そういう風に考える人だった。
自分のことよりまず子供。
それは大変だ。
「あんまり緊張しない方がいいですよ。いざというとき身体が動かなくて困ります」
「あっ、そうか」
でもどうしよう、とオロオロとする姿はいつにも増して可愛い。
しかし、緊張しすぎるのはあまりよくないことだ。なんとかしてあげたい、と思う。
「あ。よく効くおまじない、ありますよ」
「おまじない?」
カカシが口布を下ろし、自分のほっぺたをむにーっと引っぱると、ぷっと吹き出す音が聞こえた。
「これをすると緊張しません」
「た、たしかに緊張は解けるかもしれませんが、逆に気合いが入らなくなりそう…」
笑いを堪えるために声を震わせながら、抗議するイルカ。
「そうですかー?自然体の方がいいですよ」
カカシはそう言いながら、イルカの肩から力が抜けているのを確認してほっと息をつく。
イルカの方もカカシが気を使ったことを気づいているようで、
「ありがとうございます。元気が出ました」
と感謝の言葉を口にした。
カカシは気にしないで欲しい、というように軽く首を振ると、更に励ました。
「ま、のんびり頑張ってきてください」
「はい。それじゃあ、行ってきます」
にっこりと曇りのない笑顔で挨拶され、出口で別れた。
しばらく会えないのは任務だから仕方がないけれど、寂しくなるなぁとカカシは思っていた。
まさかこれほど長引くとは知らずに。
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2003.09.06 |