「でも、なんだってまたそんなことを言い出したんだ?」
アスマ先生にそう問われて、すごく困った。このカカシ先生が未来からきていると主張していると言ってしまってもいいものか。カカシ先生をちらりと見たが、説明する気はないようだった。
どうしよう、と躊躇っていると、
「言いにくいことみたいだから、カカシはあっちに行ってたら?」
と、紅先生が猫の子を追い払うような仕草をする。
別にそんなことではなかったのだけれど、大人しく離れた場所に佇んで待っているカカシ先生に、また戻ってきてくださいと頼むわけにもいかなかった。
「あの……なんだかいつもと様子が違っていたから……」
とりあえず必死で言い訳を考えた。しかもこれはあながち嘘ではないから我ながらいい理由だと思う。
「そうだったか?」
「え、ええ。だって、いつもはすごく睨まれてるし、はっきりした返事は返ってこないし。てっきりカカシ先生は俺のことが嫌いなんだろうと思ってたんですが、今日はなんだか親しげに話しかけられたものだから……」
これも嘘じゃない。本当のことだ。
これでなんとか誤魔化せるとほっとした途端、アスマ先生と紅先生は唐突に吹き出した。
アスマ先生は煙草を取り落とし、紅先生に至っては涙を滲ませながら笑っている。
「に、睨んでるんですって……!ああ、可笑しいわ」
「くっくっく。嫌い、かぁ」
え、なんでだろう。
何か可笑しなことを言っただろうか。
「あの…?」
「ああ、ごめんなさいねイルカ先生。あんまり可笑しかったものだから」
「俺、変なことを言いましたか?」
「違う違う。お前は気にしなくていいぞ。こっちが勝手に笑ってるだけだから」
「そうそう。イルカ先生は悪くないのよ。悪いのはカカシだから」
「はぁ」
よくわからないけど、今そのことについて説明してくれるつもりは二人ともないようなので諦めるしかなかった。
また今度聞いてみよう。そう心に決めて、まだ完全には笑いがおさまらない二人と別れた。
ともかく、あの人はカカシ先生なんだ。
アスマ先生たちの反応は気になったけど、それがわかっただけでも格段の進歩な気がする。
歩き始めると、カカシ先生が追いついて並んで歩く。
「どうですか?俺が『はたけカカシ』だって信じてもらえました?」
「はい。それはわかりました」
「それはよかった!じゃあ、すみませんが、しばらくイルカ先生の家に泊めてもらえませんかね」
なんだってまたこの人はそんな突拍子もないことばかり言うんだろう。
今日は厄日かもしれない。ちょっぴり、いやかなり真剣にそう思った。
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2004.10.09 |