俺は困り果てて眉を顰めるしかなかった。
「やっぱりまだ信用できないですか。どうやったら未来からきたって証明できるでしょうねぇ」
カカシ先生はかすかにため息をつく。
それを聞くと、なんだか信じない自分の方が悪いような気がしてくる。
「だいたいなんで未来からやってきたんですか?」
いったい何が目的で?
すると目の前の人は困ったように笑った。
「実はね、極秘任務なんですよ」
こっそりと耳打ちされてはっとした。
そうか、何と言っても木の葉の誇る『写輪眼のカカシ』なんだから、極秘任務だってありうる。緊張を隠せずに話の続きに聞き入った。
「その内容は言えませんが、過去へ行く術を使ってここへきたんです」
そんな風に言われると、頭から嘘だと否定するのは難しい。あり得る話からだ。
しかし、だからといって迂闊に信じることはできない。
「とりあえず、火影さまのところで過去へ行く術があるのか確認してみてもいいですか」
そんな術があるかどうかも知らないから、俺には判断しようがない。三代目なら何か知っているかもしれないと希望を持った。
「それはいい!さすが先生、証明問題の解き方がうまいですね」
「あるとわかったからと言って、必ずしも信じるとは限りませんけど」
じっと見つめられて戸惑いながらも、とても嘘つきには見えない瞳だと思ってしまった。
こうして二人で火影邸へと向かったのだった。
道すがら任務について聞くわけにもいかず、他愛のない話をして歩いた。
「そういえばイルカ先生の同僚のオウノ先生は今どうしてますか」
「え、オウノ先生ですか?今は赤土の国へ任務へ出てますけど」
「その人が任務に出る時、餞別に小さな千本をお守り代わりに渡したでしょう」
「ええ、よく知ってますね」
これは誰にも言ったことがなかった。ささいなことだったし、あの千本は少々古い物だったので恥ずかしいという思いもあったからだ。
「あの千本のおかげで命拾いしたことがあったって、オウノ先生が言ってたのを以前聞いたことがありますよ」
「でも、それほど危険な任務じゃなかったはずですけど……」
「途中で他の事件に巻き込まれたらしいですよ」
まるで起きてしまった出来事として当然のように語る姿に、もしかしてもしかしたら、この人は本当に未来からやってきたのかもしれないと思う。
火影邸へと近づいてきた時、同僚が俺に気づいて慌てて駆け寄ってきた。
「オウノ先生が怪我したってよ!」
「えっ」
「なんでも、持っていた伝令の巻物が価値のあるものだと勘違いされて襲われたらしいぜ。今目の前で病院へ運ばれていったばかりだ」
「それで容態は…!」
「幸い命に別状はないらしい。千本が役立ったって本人が言ってたくらいだから、意識もはっきりしている。落ち着いたら見舞いに行こうって今もみんなで話していたところだ」
「そうか、わかった」
明日朝の朝礼で職員全員に通達して、お見舞いの代表を決めなくてはいけない。そう話し合ってから同僚と別れた。
怪我をしたなんて心配だ。命に別状はなくても後遺症の残る怪我だったら……
「大丈夫ですよ。オウノ先生は十年後もバリバリ現役で教師やってますから」
カカシ先生はそう言って笑った。
その言葉を信じたいと思った。そうならばいいと真剣に願った。
そして、さっき言われたことはちゃんと本当のことだったのだと今さらながらに気づいた。
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