【明日の夢を今日夢見る2】


どうしてよいのかわからなかくて頭を巡らしたけれど、結局こういう場合は無視するに限るという結論に達した。
「そうですか、大変ですね。それじゃあ俺はこれで……」
笑顔が引きつりながらそう言って踵を返そうとしたが、さすが上忍、難なく掴まってしまった。
「まぁまぁイルカ先生、嘘じゃないですよ。信じてください」
腕をがっちりと掴まれて、またしても身動きが取れない。
「離してください。そんなの、信じろと言う方が無理ですよ!」
「んー、まあ、そりゃそうですね。未来からきた、なんて普通信じませんよねぇ」
怒り出すかと思ったら、意外とあっさり認められて拍子抜けするほどだ。
ここぞとばかりに頷いて、解放されるのを期待した。しかし、それは儚い夢だったらしい。
「まあ、それはおいおい信じてもらうとして……」
おいおい?まだ未来からの使者だとかいう話は続くか?
ぜんぜん諦める気はないみたいだ。
「とりあえず今は俺がはたけカカシ本人だということの証明に専念することにします」
いや、別に専念してくれなくても俺は全然かまわないんですが。
そう言いたいのは山々だったけれど、上忍相手にこれ以上怒らせるようなことをしたくなかった。証明できるならしてほしいという気持ちもあった。いつものカカシ先生ではないけれど、やはり本人のような気がしたから。なんとなくだけど。しかし、それだとどうしてこんなことをしているのかよくわからない。
敵意がさっぱり感じられないところから見て、何かの冗談かもしれない。きっとそうに違いない。少しの間騙されたフリをしていれば、こんな馬鹿げたことも終わるだろう。
「わかりました。じゃあ証明してくださいますか?」
考えがまとまって気が楽になった俺は、にっこり笑ってそう言ってみた。
そうしたら、
「あなたの考えてることはわかりますけどね。ま、今はよしとしましょう」
などと言われた。
え。この人は人の心も読めるんだろうか。
不安になって相手の顔を見つめた。
「大丈夫。心を読んでるわけじゃないでーすよ」
あっさりと否定されて顔が熱くなる。
きっと顔に出ていたのだろう。よくわかりやすいと同僚達にも言われるから。恥ずかしい。
「さて、どうしましょうか。お、ちょうどいい」
そう言って向けられた視線の先に、アスマ先生と紅先生がこちらに歩いてくる姿があった。
たしかにあの二人ならこの人が本物のカカシ先生かどうか確認できるだろう。上忍師同士というだけでなく、普段も仲が良い人達だから。
「おーい。アスマ、紅、ちょっと」
呼び止められた二人が近寄ってくる。
「何だ、どうした」
「あのねぇ、俺が誰だか言ってみて」
「はぁ?」
「ついに頭がおかしくなったの、カカシ?」
アスマ先生と紅先生は突然の質問に呆れていた。
それはそうだろう。尋ねるにしても、もう少し聞きようがあるんじゃないだろうか。
「そーじゃなくて。イルカ先生がね、俺が本物の『はたけカカシ』か疑ってるから、証明するのに協力してって言ってるの」
「ふぅん、どれどれ?」
紅先生は、カカシ先生とおぼしき人物を頭のてっぺんから足のつま先までじろじろと眺めた。
アスマ先生は、その二人を一歩離れたところから煙草の煙を吐き出しながらのんびりと見ていた。
「そうね、間違いなく『はたけカカシ』ね」
「ああ、そうだな」
「本当ですか?」
疑うわけではないが、二人とも騙されているという可能性だってある。
「何度も一緒に任務に行ってるんだぜ?敵に騙されないよう、外見以外にチャクラまで確認済みだ」
「そうよ。まあ、いつもより落ち着いたチャクラかな?とは思うけど、たしかにカカシのものだわ」
はっきりと断言されて、安心した。
二人が認めたことで、カカシ先生だということは確認できた。それは今までの唯一の収穫のような気がする。


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