「カカシ先生?」
「これ、片づけてきます」
夕飯を食べ終わった皿を、ガチャガチャと音を立てて運んでいく。『俺がやります』と声をかけようとしたが、聞いてくれそうな雰囲気ではなかった。
冷たい視線と態度。以前の声をかけづらいカカシ先生に戻ってしまった。
何か気に障ることを言っただろうか。俺の不甲斐なさが不愉快だったとか。
思わずカカシさんを振り返って、どうしようかと意見を求めると、カカシさんはあっさりと放っておけばいいと言う。
「拗ねてるんでしょ、きっと」
「え?」
「ほら、イルカさんの中忍試験のこと。知らなかったのが自分だけで、悔しくて拗ねてるんですよ」
拗ねてるという可愛らしい雰囲気じゃなかったように思うけど。
「そんな子供みたいなこと……信じられません」
「思ったことをうまく伝えられないんだから、子供と一緒です。表現不足の上にヘタなんですよ。ちょっと大目に見てやってくださいよ」
そうなのだろうか。
本人が言うのだから間違いないと言えば間違いないのだけれども。
「でも……カカシさんはそんなことないじゃないですか」
同じ人間ならば片方がそうじゃないなんておかしい。
カカシさんとカカシ先生は、そこのところが俺の中では噛み合ってない。だから戸惑ってしまう。
カカシさんは思っていることと態度が違うことなんてないように感じる。もちろん心の中をのぞけるわけではないのでただの勘にすぎないけど。
「だって俺は、イルカ先生にちゃんと教育されましたから」
「えっ」
教育って。
しかも俺が?
にこにこと笑うカカシさんを見つめながら、もしかして『イルカ先生』って俺とは同名の別人じゃないかと思い始めていた。
それが表情に出ていたのか、カカシさんは吹き出した。
「大丈夫。イルカさんはちゃんとイルカ先生ですよ」
保証しますと言われても、どうにも信じがたかった。


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2005.07.23


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