次の日。アカデミーの職員室で、今頃第二試験の真っ最中だろうと思いを馳せていたとき。意外なことを聞いた。
「えっ、だってあいつ、伝令係だっただろう?」
「そうなんだよ。よりにもよって、この時期に急性盲腸なんてなぁ」
試験官が入院してしまい、今代わりを探しているのだと言う。伝令役は試験中指定された場所で待機していなければならず、五日間も拘束されるため代わりがなかなか見つからないらしい。
これはチャンスだと思った。
試験に係わることは諦めていたけれど、代わりが居ないというなら俺が立候補してもいいのではないだろうか。さいわい五日ぐらいなら、アカデミーの授業の時間割を少し変更してもらえればなんとかなるはずだ。
どうしてもと無理を承知でアンコ特別上忍に願い出て、第二の試験の伝令役を任せてもらえることになった。
家に居るカカシさんには、式を飛ばしてしばらく帰れない諭旨を伝えてから、待機に入った。
「第二の試験、三人とも突破おめでとう」
「やったー!!やった!やった!やったってばよー!」
まだ話が終わらないうちに、ナルトははしゃぎだして喜びで何も耳に入ってない状態だった。
困った奴だ。これから巻物の意味や、中忍の心得の説明をしなくてはならないのに。
浮かれるナルトを見ると、これからさらに大変な試験が待っているというのに大丈夫かと心配になる。
それでも喜んでいる姿を見ると、その気持ちがよくわかる。俺だって嬉しいのは同じだ。本当は一緒に叫びたいくらいなのだから。
気持ちは複雑で、一言では言い表せない。
伝令役としての責務を果たした後、思わず心配でこの先の注意を促すと。
「この木の葉の額あてもらった時から、俺ってばもうアカデミー生じゃないんだぜ!心配無用だってばよ!!」
額あてを誇らしげに掲げ、強い決意を伴ったまっすぐな瞳。
その迷いのなさに、はっとさせられた。
「今は、忍者なんだからな!」
「……そうか。悪かったな、ナルト」
多少落ち着きがなくとも、仲間と共に試験を突破してきたのだ。それが忍者である何よりの証。
試験に備えて、常に自分たちの力を最大限発揮できるよう努力している。たとえ次の試験に落ちたとしても、これまでの努力は無駄にはならない。この先忍者を続けていく上での力になるだろう。
カカシさんの言っていた通りだ。
この子たちの力を本当に分かっているのは、きっとカカシさんの方かもしれない。そう考えると、無性に会いたくなった。
この後受験者や試験に携わるものすべてが一堂に集められ、そこで第三の試験についての説明があり、これから夜通しで予選が行われることに決定したのだった。
このまま会場に直行したい気持ちは山々だったけれど、一度家へ帰ってからまた戻ることに決めた。長い間留守にしてさすがに心配だったし、カカシさんに報告したい気持ちが強かったからだ。
煌々と点る会場の灯りを見ながら、家へと向かった。
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