その後カカシの強引な誘いもあって、結局毎週土曜日はカカシの家で三人そろってお風呂、というのは決まり事になっていた。
『こんな広いお風呂、たくさんで入った方が楽しいですよね』
そんなイルカの鶴の一声で決定した。
カカシは、本当はアスマがいない方が好ましい。いや、絶対その方がいいに決まっている。しかし、二人っきりだとイルカが遠慮してしまうのを恐れて、なかなか言い出せない。
アスマはアスマで、毎週という面倒くささに辟易しながらも、今さら後に引くわけにはいかなくなっていた。
そんなある日。
「カカシ。俺は今週の土日は任務で、お前んところに行けなくなった……」
「なにっ!!それは本当か!?でかしたナイス!それでこそ俺の親友だ!!」
いったい誰が、いつ、お前の親友になったんだ。
「イルカ先生と二人でお風呂v」
ウキウキと鼻歌交じりのカカシを横目に、心の底からイルカに詫びたかった。
無力な俺を許してくれ、と。
しかしできるだけのことはしてやりたいと思い、他の同僚を誘ってみた。
「紅、お前さ。俺の代わりにイルカについて行ってやれないか」
「いくらなんでも女の私じゃ不自然ってもんよ。だいたい私に素っ裸でカカシを止めろって言うの?冗談じゃないわ」
「駄目か……」
アスマはガックリと肩を落とした。
たしかに正論なので、反論する気力もない。
その気落ちした様子があまりにも哀れを誘ったのか、紅も対策を考えようと思案を巡らしていた。
しばらく考え込んでいたが、何かを見てハッとした。
「そうよ、私より適任がいるじゃない。ホラ!」
紅が指差した先には、金髪の子供がなにげに道を歩いていた。


「わー、すっげー!こんなでっかい風呂初めてだってばよ!」
「フン。確かに無駄に広いな」
「へぇー」
「お邪魔しまーす」
てっきりイルカ一人だと思っていたら、ナルトにサスケ、他に新人下忍達まで連れ立ってきた。
カカシにとっては寝耳に水。
「な!お前ら、なんで…」
「イルカ先生ばっかりズルイじゃん!俺達も入りに来たんだってば」
どやどやと入ってきて、ぎゃーぎゃーと騒ぎ始める。
「二人っきり計画が……」
カカシは誰にも聞かれないようひっそりと呟き、その場にしゃがみ込んだ。
「すみません。うるさかったですか? 俺、教え子達と一緒にパァーッと入るのが夢だったんです。カカシ先生のおかげで叶いました。ありがとうございます」
「イ、イルカ先生〜」
カカシは涙を浮かべながらイルカの両手を握りしめた。
その瞬間。
スコーンと石けんが後頭部を直撃した。
「こらっ、お前ら!大人しく入らないと駄目だろ!」
イルカの怒鳴り声に
「はーい」
としおらしく合唱するものの、おそらく返事だけだと思われた。
「お、お前らーー。人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られる前に俺が蹴り殺してくれるわー!」
ブチ切れた上忍は、大人げなくも写輪眼全開だった。
子供達のうわーとかぎゃーとか叫ぶ声があたりに響き渡ったのだった。


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