「好きです、カカシ先生!」
「俺も好きですよ、イルカ先生のこと」
にこやかに返ってくる言葉。
ああ、駄目だ。絶対勘違いされている。
飲みに行った帰りに、勇気を振り絞って言ってみた。
でもカカシ先生の反応を見ていると、友人として好きとか人間として好きだという意味としてしか捕らえていないのがわかる。それともただの酔っぱらいの戯言だと思われているのだろうか。
そうじゃないのに。
どうしたらわかってもらえるかと思い、懸命に頭をひねった。
「あの……、俺の言う『好き』は、つまり恋人になりたいとか付き合って欲しいとかいう意味と同じなんですが」
「は?」
カカシ先生は相当驚いたのか、普段は半眼が多いのに今は思いきり見開かれていた。
「……えーと、嘘でしょう?」
「いえ、嘘じゃありません」
やはり突然のことで戸惑っている様子だ。それはそうだろう。突然男から告白されたわけだし。
「あの……カカシ先生?」
「本気で言ってますか」
なんだか雲行きが怪しい。怒っているかのようなキツイ口調だ。
やはり告白などやめておくべきだったか、と今さらながらに後悔した。
今までのように気軽に口も利けなくなってしまうのだろうか。
そうわかっていても、冗談でしたと言う気は何故か起こらなかった。正直な気持ちを伝えようと思った。
「ほ、本気です」
カカシ先生はすっと目を細め、眉間にしわを寄せて言った。
「本気だと言うなら、俺を好きな理由を教えてください。そうしないと納得できない」
「好きな理由……ですか?」
「ええ。イルカ先生の『好き』は信用できません」
キッパリと言われてショックだった。
俺ってそんないい加減な人間に見えるのだろうか。
一大決心をしてようやく言えた告白が信用できないなんて。これ以上どうすればいいんだろう。
「俺は明日から遠出の任務があって、一週間里にいません。ちょうど一週間後にその理由を答えてください」
「一週間後……」
「今日はもう帰ります」
いつもなら『おやすみなさい』の挨拶があってから別れるのに、今日はそれもなしだった。
心なしかカカシ先生の足音さえ怒っているように聞こえて、ただその後ろ姿を見送るしかなかった。


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2003.12.13


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