下忍任務報告のため、受付をするイルカ先生の列に並ぶ。
「お疲れさまでした」
報告を受理するときのお決まりの言葉だが、それと共に向けられる笑顔は格別だ。
他愛ない笑顔も、他の奴らよりも優しく特別に微笑まれている気がする。
なんてったって恋人だからね。
ひそかな優越感。
「イルカ先生、今日はもう帰れますか」
「あ。すみません。今日はちょっと受付のみんなと飲みに行く約束で…」
ガッカリだ。
せっかくの楽しみが台無し。
「あー、残念。せっかくコレもらったから料理してもらおうと思ってたのに」
手にした袋をちょっと掲げてみせる。
中には今日の畑仕事のご褒美としてもらった野菜がごろごろ入っている。
イルカ先生に料理してもらったら、さぞかし美味しいだろうに。
あまりにもあからさまにガッカリした様子が周りに伝わったのか、他の受付に座っている人間が声をかけてきた。
「あー、イルカ先生。はたけ上忍と帰られたらどうですか」
「え、でも先に約束してたのに」
「たとえ先約でも恋人は別格でしょう?我々はまた今度でいいから」
なんていいことを言う人だ。俺はちょっと感激した。
恋人になってよかった。
やっぱり恋人と過ごす方が優先されるのだ。
「それじゃあ、また今度誘ってください」
律儀にイルカ先生が答えていた。
いや、別に誘ってくれなくても俺は全然構わないんだけど。
怒られるかもしれないから、心の声は口に出さないでいた。
それからいつものように二人で並んで歩いて帰る。
「イルカ先生の料理はホント美味しいから、楽しみです」
「そうですか?カカシ先生こそホント美味しそうに食べてくれるから、作り甲斐があります」
食べると自然に浮かんでしまう笑顔を見せるだけで料理を作ってもらえるなら、いくらでも笑うのにと思いながら家路に着いた。
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2003.03.01 |