【先手必勝】

一周年記念リクエスト大会
石野司さまリク「賭けオセロゲームの勝負に勝ったイルカ先生が、カカシに一つだけ願いを伝える」の『賭けオセロゲームの勝負に勝ったイルカ先生』部分


「ただいまー」
「おかえりなさい。あれ?それ何ですか?」
いつものように間延びした声で帰ってきたことを告げるカカシ先生は、何かの箱を抱えていた。
「オセロですよ」
「どうしたんですか」
「今日の任務は引越の手伝いで、ゴミとして捨ててあったのを拾ってきました。なーんかもったいなくて、つい」
珍しいこともあるものだ。
この人から『もったいない』なんて言葉を聞くなんて。
そんなにオセロが好きだったろうか。初めて聞く。というか、そういった類には興味のない人かと思っていた。
「ねぇねぇ、食べ終わったら一緒にやりましょーよ」
「いいですよ」
嬉しそうな誘いの言葉に、こういうのもいいなと思った。
興味がないと思い込んでいたために今まで誘おうともしなかったけれど、夕飯の後に二人でのんびりと遊ぶのはきっと楽しいだろう。
少し浮かれた気分になった。


夕飯も食べ終わり、片付けも済ませてしまい、さあ始めましょうと向かい合った。
初めての相手とするときは、まずは様子見。
最初から手の内を見せるのは面白くない。徐々に手腕を見せていくのが通というものだ。
ウキウキと石をおいていく。
しばらくして、カカシ先生は意外と目先の利に捕らわれてしまう方だとわかり、少し笑ってしまう。もちろん相手には気づかれないように。
あまり得意ではないのだろう。
一見黒が多いように見える盤も、要所を押さえてあるからいつでも逆転可能だ。しかもそのことには気づいていない。
本気で相手をするのも可哀想に思い、まあ遊びだし負けてあげてもいいかなと思っていた。
そのとき、カカシ先生が待ったをかけた。
「せっかくだから何か賭けませんか」
「賭けるお金なんてありませんよ」
「やだな、イルカ先生。お金じゃないですよ。『勝った方の言うことをなんでも聞く』ってのはどうですか」
額あても口布も外したくつろいだ姿で、にこにこと笑うカカシ先生。
なるほど、それが目的だったのか。
ちょっとガッカリした。
せっかくどうやって攻略していこうかと純粋に楽しみにしていたのに。こういうやりとりも緊張感があっていいなと思っていたのに。
オセロはただの口実だったなんて。
しかも自分が優勢だとわかってから口に出す賭け。
なんて卑怯な。
これはどうあっても負けられない。
絶対勝って言うことをきかせてやろうと決心した。


数十分後。
惨敗して呆然としているカカシ先生に言った。
「オセロはよくシカマルと対戦しているから得意なんですよ」
「えっ。そりゃ卑怯じゃありませんか!だってあの子、負け知らずでしょ!」
抗議してくる姿に
「何が卑怯ですか。俺はオセロが苦手なんて一言も言ってません」
と言ってやる。
そうすると、ちょっと泣きそうに顔を歪めて悔しがった。
「ちぇーっ。わかりましたよ、イルカ先生。約束通り何でも言うこと聞きますよ。願いごとは何ですか」



→料理が上手なのは、もちろんイルカ先生。
→実は意外とカカシ先生。


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