集合場所にはもう全員集まっていた。
だからといって俺が遅れたわけでもない。
なんでみんな、きっちり来るんだろーね。不思議だ。
「おはよー」
「ブハハハ。なんだ、その頭は!」
朝のさわやかな挨拶をするとアスマにいきなり笑われた。
「何だよ」
失礼な奴だな。ちょっとの寝癖ぐらいどうだっていうんだ。肝の小さい男め。
ところが、子供たちまで笑っているのだ。
おおっぴらにゲラゲラと笑う子や、クスクスと肘でお互いを突つき合う女の子ら。
一際大きいギャハハというナルトの笑い声が聞こえる。
なんだっていうんだ。
「ククク。鏡貸したげる」
紅が肩を震わせながら差し出してきた携帯鏡。
それを見て開いた口がふさがらなかった。
髪の毛が。
俺の髪の毛が。
頭には、天に届けとばかりに上を向いた三つ編みが三本生えていた。
「なんだ、こりゃー!!」
きっちり頭を三等分された髪の毛は、ご丁寧にも根元から編み込みが始まっていて、ぶっとい三つ編みが屹立している。
「やられた!イルカ先生……」
がっくりと膝をつく。
道理で満足そうに眺めていたわけだ。
そういえば珍しく起こすのが遅いとは思っていたのだ。髪の毛をひっぱられていた気もする。眠かったからよく覚えてないけど。
たしかに油断はしていた。しかし、まさかこんなことをしていたなんて、誰が思うかー!
「お前ら、笑ってないで解けよ」
「や。あんまり芸術的なもんだから、もったいないっつーかさ」
「ホント器用に編み込んであるわねー」
「うっさいよ。早く解け」
不機嫌に言うと、ようやく笑いを堪えながらも三つ編みを解こうと寄ってきた。
イライラしながらも解けるのを待っていたが、いつまで経っても終わらない。
「早くしろよ!」
「あー、駄目だこりゃ。チャクラ練りこんであるから、編んだ奴にしか解けないようになってるわ」
「あはは。イルカ先生、サイコー」
紅が腹を抱えながら笑っていた。
イルカ先生、酷いです。俺は笑いモンです。
そりゃ笑うだろうさ。
俺だって人がやってたら笑うさ。
だが人間は、自分が笑われるのには耐えられない生き物なんだよ。
「だいたいなんで気づかないんだよ。普通編んであったら、重みとかなんかでわかりそうなもんだろーが」
アスマが涙を拭きながら笑っていた。ちきしょーめ。
「甘いんだよ。チャクラ練りこんであるってことは、重みも消してあるってことだ。たぶん軽い幻術もかけてあるはず……だから今まで気づかなかったんじゃないか!」
「すごい芸が細かいじゃない」
「なんか知らんけど、イタズラに関しては時たま他の追随を許さないくらいすごいんだよね、あの人」
ずーんと落ち込んで座り込むのは、何故か正座。
「カカシ。お前、今日はこれでも被っとけ」
編み笠を差し出されて顔を顰めはしたものの、この頭を一日中曝すぐらいならまだマシだと思い直した。
「皆さん、今日は出来うる限り早く任務を終わらせてクダサイ。お願いシマス」
「まあ、朝から笑わせてもらったからな。任せとけ」
「そーね。みんな今日は頑張りましょう」
「はーーい!!」
子供たちの元気のいい返事は、耳に痛いほどだった。
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